“アクティブ電動車いす XT4” 「札幌国際芸術祭2027」のプレイベントで雪道を走行

2026/06/12

2027年1月16日~2月21日に札幌市で開催される「札幌国際芸術祭2027」のプレイベントが、今年2月4日~11日に開催されました。

札幌国際芸術祭(略称:SIAF[サイアフ])は、公共施設や公園、地下空間など札幌市内のさまざまな場所で開催される、3年に一度の国際的な芸術祭です。

アビリティーズでは、札幌国際芸術祭実行委員会事務局(札幌市 市民文化局 札幌国際芸術祭担当課)からご相談をいただき、自身も車いすユーザーであるアーティストの檜皮一彦さんに、 アクティブ電動車いす「XT4」を貸し出しました。

フォトギャラリー(画像はクリックで拡大します)

プレイベントの様子は下記の記事やSNSでもご覧いただけます。(提供:札幌国際芸術祭実行委員会)
冬のプレイベント@さっぽろ雪まつり大通6丁目会場 レポート
札幌国際芸術祭 / SIAF 公式Instagram

インタビュー

檜皮一彦さんおよび実行委員会事務局の方々に、アクティブ電動車いす「XT4」を借りることになった経緯と、実際に使ってみた感想をお聞きしました。

実行委員会:檜皮さんには2024年の芸術祭にも来ていただいてまして、その際に、冬シーズンに車いすユーザーが安心して作品を鑑賞するために必要な条件について、リサーチを実施していました。
そしてその内容を、札幌市まちづくり政策局 政策企画部 ユニバーサル推進室が昨年10月に札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)で開催した「ユニバーサルFes(※)」のトークイベントで紹介しました。
これまでも、実行委員会事務局では、様々な障害ある方々に配慮した芸術祭の開催に向けて取り組んでいましたが、これを機に、ユニバーサル推進室との連携がはじまりました。

こうした背景もあり、今年開催されるプレイベントの一環として、檜皮さんに再び北海道に来ていただき、さっぽろ雪まつりの会場内に、大阪・関西万博会場に展示された作品をさっぽろ雪まつり仕様にアップデートした「《HIWADROME: type_ark_spec3》2026」を展示していただくことになりました。
ですが、今年は思いのほか積雪が多く、檜皮さんがふだん乗っておられる電動車いすでは、雪上で制作指揮を行うことが難しいことが分かりました。

そこで、ユニバーサル推進室に相談したところ、担当係長が「札幌芸術の森」や「さっぽろ雪まつり」での アクティブ電動車いす体験試乗会のイベント(※)のことを覚えておられて、「アビリティーズに相談してみたら」ということになりました。
記者:実際に乗ってみていかがでしたか?
檜皮さん:今回、計10日間ほど札幌に滞在しましたが、XT4を用いることで普段と同じような制作環境を整えられたことは、とても大きいことでした。
私が日常使用している電動車いすで対応することは、難しかったと思われます。
XT4あっての設営作業でした。感謝申し上げます。
記者:当初は、会場で制作指揮のためだけに使用する予定でしたが、宿泊先のホテルから会場への往復でも使われたんですよね。
檜皮さん:2日目までは自分の電動車いすで宿泊先のホテルと設営現場を移動していましたが、地図アプリではおよそ8分と表示されている移動に、道路の状況により都度迂回の必要が生じたり、日によっては30分ほど掛かることもありました。
ロードヒーティングで除雪された部分と雪が残っている箇所に大きな段差が生じていたり、気温が上がった日には雪がシャーベット状になってスタックも起こりましたが、XT4ではいずれも問題なく走行できました。
まったく圧雪されていない場所などは、事務局の方に少し除雪やスロープを設置頂いたり、行動を共にしていた設営チームの助力もあり、乗り越えていました。
記者:レバー操作も短期間でマスターされて、ホテル以外にもチ・カ・ホの飲食店やコンビニの店内にもXT4で出掛けられたとか。
檜皮さん:自分の車いすに慣れてしまっているので初日は戸惑いがありましたが、2日目には慣れ始め、3日目には「このままホテルまで乗って行っていい?」となるまでに操作に慣れ、チ・カ・ホに降りるエレベーターにも乗れました!
記者:ホテルや飲食店側の反応、受け入れはどうでしたか?
実行委員会:従業員の方が「こんな車いすがあるんだね」と注目して見ておられましたが、特に驚かれる様子もなく、自然体でした。
会場では子供たちが「かっこいい“クルマ”に乗ってる!」と興味津々に見てました(笑)
ホテルの部屋の中など狭いところでは自分の車いすで、外出するときはXT4のようなアクティブ電動車いすで、というように、2台を状況に応じて使い分けられるといいのかな、と。
檜皮さん:屋外と室内で車いすを乗り換えていらっしゃる方は多いと思いますし、私自身もスケートボードを車いすの背面に常に搭載して、移動手段として用いています。
TPOに合わせて靴を履き替えるように、車いすも乗り分けるのが当たり前になれば、移動の可能性は広がるはずです。
実行委員会:普通の車いすだと、介助に最低2人は必要で、歩行中も前輪が引っ掛かったりするので持ち上げながら移動するので、どうしてもそちらに気を取られてしまうのですが、XT4だと檜皮さんとおしゃべりしながらいろんなところに行けるのがうれしかったです。
むしろ檜皮さんの方がどんどん先に行って、私たちが早歩きで後ろからついていく、みたいな(笑)
記者:走行中は座面を昇降しましたか?
檜皮さん:最高速度で走りたいので、座面を下げて走っていましたが、設営作業中や開幕した雪まつりの会場では、座面を最大まで上昇させて、人混みの後ろから雪像を眺めました。
こういうことは普段使用している車いすでは出来ないものですから、とても有用な機能だと思いました。
あと直接的な機能とは違うかもしれませんが、立っている方と無理なく目線を合わせられるという点は、とても大きい事だと感じています。
実行委員会:特にプロジェクションマッピングが始まると一気に人だかりになるので、私たちでも背伸びしないと雪像が見えなくなってしまいますが、XT4はかなりの高さまで座面が上がるので、とてもいいなと思いました。
逆に一番低い位置まで下げても少し高いので、食事の時などはふだんの車いすに乗り換え、テーブルに近づいて食事されていました。使う場面場面によって車いすを乗り換えられたらいいですね。
今回感じたことは、あくまで私が会場にいた範囲ですが、車いすで会場に来られた方は2人だけでした。
「冬シーズン中は車いすの方がまだまだ気分的に外出しづらい環境なんじゃないかな」と、檜皮さんと話をしました。
もし「冬の間は車いすユーザーの方は外出しないものだ」という思い込みが、障がい当事者にもそれ以外の方たちにもあるのだとしたら、今回、檜皮さんが雪の中をガンガン走り回っている動画を発信して多くの人に知ってもらうことは、重要な意味があるのではないかと思います。

最後に

令和6年4月に障害者差別解消法が改正され、民間事業者も「合理的配慮の提供」が義務化されましたが、このことを念頭に、檜皮さんと実行委員会事務局のスタッフの方々に「札幌国際芸術祭としてどのような役割を果たすべきなのか」という視点から、語り合っていただきました。

「国や行政による指導や啓発も大事だが、一般の方たちが自然に『気付く』ことがもっと重要で、例えば、檜皮さんがホテルから会場に来るだけでもこれだけ大変なんだということは、自分たちも知らなかったですが、今回のことで、次の日から道路の見え方が変わっていました。そうした小さな『気付き』の積み重ねが、遠回りのようで、実は近道なのでは。国際芸術祭を開催する意義はそこにあるように思います。」

というお言葉が、とても印象的でした。
アビリティーズも、地域に根差す福祉機器・バリアフリー機器の専門会社として、XT4だけでなく様々な用具を通じて関わっていきたいと思います。

アーティストについて

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檜皮 一彦(ひわ かずひこ)

大阪出身。京都芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻修了。
自らの移動手段である車いすをメディアとして用いるインスタレーション作品「HIWADROME」シリーズをコアに、ワークショップやリサーチ等を経て可視化された障壁や、社会に組み込まれている潜在的な勾配に対し、新たな導線の設計という具体的な実践を通じて未来へ架ける「walkingpractice / code_knitting_record」などのプロジェクトを展開している。

まちづくりの重要概念の一つとして「ユニバーサル(共生)」を位置付けている札幌市が、誰もが互いにその個性や能力を認め合い多様性が強みとなる共生社会の実現を目指し、市のさまざまなユニバーサル施策等の取り組みを紹介するイベント。

*本⽂書に記載している情報は発表⽇時点のものです。

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