障害のある方の声に耳を傾け、あらゆるお客様が集う広場づくりを(京王プラザホテル様)

2023年12月28日

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【 京王プラザホテル:客室担当・中村様(左)、広報担当・杉浦様(右)、当協会会長・伊東(中央) 】

1971年、西新宿に日本初の超高層ホテルとしてオープンした京王プラザホテルは、現在ユニバーサルルームを13室設け、ハード面の整備を拡充しているだけでなく、東京都の「心のバリアフリー好事例企業」に認定されるなど、ハード・ソフト両面でのユニバーサルサービスの推進を、業界内でも先駆けて行っています。

障害者差別解消法が改正され、2024年4月からは民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます。この対応に追われている事業者も多い中、同ホテルでは、1988年からユニバーサルルームを設け、障害のあるお客様にもご利用いただける取り組みを進めていらっしゃいます。

客室担当・中村さおり様と広報担当・杉浦陽子様に、当協会会長・伊東弘泰がお話を伺いました。(文中敬称略)

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お伺いした内容

業界におけるユニバーサル化の先陣

伊東:京王プラザホテルさんは、30年以上前からユニバーサルルームをお持ちで、2018年のリニューアルの際は、私どもがお手伝いさせていただきました。
2013年に開催された全国障害者スポーツ東京大会では、アビリティーズがアスリートの宿泊先に福祉用具を納入・貸与する業務を担当させていただきましたが、その際もたいへん協力的にご対応いただきました。御社は、創業当時から先進的なところがおありですね。
中村:当時は、山手線の外側にホテルをつくっても、人はなかなか来ないと言われていた時代でした。しかし、初代社長の井上定雄はこれからは国際化の時代であり、「多くの海外のお客様がお泊りくださる、多様な方々がホテルに集まってくる」と考えました。
今でこそあたり前に「多様」という言葉が使われていますが、当時としては斬新だったと思います。出入口をたくさん設け、あちらからもこちらからも出入りでき、人々が集まりやすい「広場」にしようという発想でした。
杉浦:都市の発展には、広場が必要ということで、スペイン語で広場を意味する「プラザ」という言葉をホテルの名前にも入れました。ホテル=宿泊施設という概念に捉われず、いろいろな方に、思い思いの時間を過ごしていただける場所になりたいという「プラザ思想」が開業当時からずっと受け継がれてきています。
伊東:バリアフリー化、ユニバーサルルーム設置のきっかけは、1988年の第16回リハビリテーション世界会議(*注1)ですね。
中村:はい。当時は車いすのお客様への対応について全く分かっておらず、車いすの押し方を社員が宴会場で練習するところから始めました。アジアで初めての立派な会議を成功させたいという一心で、とにかく今できることからやっていこうと取り組みました。車いす対応の客室を15部屋設け、入口ドアの幅を広げたり、バスルームの広さは変えられないけれど、扉の大きさを変える工事をしたり。デスクは、引き出しが邪魔になるので、そこを馬蹄形に抜いて車いすでも入れるようにしました。
ホテルにはこのような方がこれからも大勢いらっしゃる、車いすに限らず、視覚聴覚や他の障害の方もいる、いろいろな障害の方のことを考えていこう、ということになりました。この改装した客室は、健常者が利用しても違和感がなく、専用の客室として販売制御をかけなくて良い点も特長の一つです。
伊東:ホテル業界でバリアフリーについての関心がまだ薄かった時代に、日本でもトップレベルのホテルが率先して取り組まれたのは社会的にも影響力がありますし、業界の「旗印」になったのではないかと思います。
中村:障害のある方から、利用された後に感想が寄せられ、“こういうところが使いにくい”というご意見をいただいたこともありました。そこでご意見やご提案いただいたことに対して、できることはすぐに対応しました。例えば、シャンプーなどのバスアメニティに輪ゴムを掛けて、その本数で区別するというのは、視覚障害の方のご提案でした。
伊東:当時、他にユニバーサルルームが無かった時代であり、ホテルに対しての期待が高かったのですね。アメリカやヨーロッパのホテルでは、車いすなどを利用している方が不自由なく泊まれることは“当然”です。日本でもそれがあたり前の時代が到来しています。
中村:100%は難しくてもやれることは何があるのだろうと、考えるきっかけをいただけたと感謝しています。そういうお声をいただけなければそのままですから。

*注1 第16回リハビリテーション世界会議
1988年9月5日~9日に、京王プラザホテルを会場として開催された、アジア地域初のリハビリテーションに関する世界会議。参加者は93か国、2,807名にのぼった。

さまざまなお客様に安心してご利用いただきたい

伊東:私どもアビリティーズは、障害のある方や高齢の方向けの旅行プログラムを1972年からやっていますが、宿泊先がバリアフリー化されているかどうかはとても重要です。単に段差がない、だけでなく、トイレや浴室が車いす利用者でも使用できるのか、などを事前に細かく調べます。ホテル側には、高齢者や障害のある方への配慮を行っていることをアピールしていただきたいです。安心して利用できることが分かると利用者もありがたいです。
中村:専門のお医者様にかかるために、定期的に九州から東京に来られる、化学物質過敏症の方がいらっしゃいます。病気の特性から、洗剤やシャンプー・リンスなどに気をつけなければならず、当ホテルでも対応させていただいていますが、それをきちんと打ち出すことで、アレルギーをお持ちの方にも来ていただきやすくなるかも知れませんね。
羽毛アレルギーの方なども多いので、枕やソファーに置いてあるクッションなども交換しています。他にも目に見えない障害やご苦労をお持ちの方も多く、東京という大都会にはいろいろな方がいらっしゃり、求められることもたくさんあると感じています。
そうやって分かったことがあれば対応していく。他のスタッフも「このクッションの中身は何だろう」ということを考えるようになる。このような変化がよいことだと思います。それが少しずつ重なって、ユニバーサルサービスの伝統になっていき、もっとよいものができるのだと思っています。
伊東:そのような取り組みのお蔭で、障害のあるお客様も多くいらしていますよね。
中村:そうですね。ただ、予約の際に、車いす使用を必ず申請していただくということではないため、変な言い方ですが、車いすを利用されていることがチェックインの時に分かった、ということもあります。それでも、車いすの方が見えたから、構えて特別に何かをするということはないですし、車いすだと伺っていないことで困ったことが起こることもなく、普段通りの対応をさせていただいており、それで問題ありません。そのような対応で、気軽にご利用いただけているのかなと思っています。
今、当ホテルの従業員は、お手伝いが必要な方がたまたま車いす利用の方だったというくらいの感覚でいます。障害のある方という括りではなく、お手伝いが必要なひとりの方なのです。どのお客様も、初めてのホテルでは、例えばトイレの場所などご存知ではありません。そのご案内をするのと同じことなんですね。
伊東:困りごとは人それぞれですからね。私どもで、車いす操作の研修をさせていただく時、ご利用者が何を望まれているかを確認してからお手伝いすることが大切だ、とお話しいたします。同じ車いす使用者でも、手伝ってほしいことは違います。視覚障害も、全盲の方、弱視や視野狭窄等の方もいらっしゃいます。
日本は分離教育で、障害のある方と接する機会が少ないため、一緒にいれば自然に身につくことも、学ばなければ習得できないという背景があります。
一方で、障害のある人が“このようなことで困っている”とうまく伝えられないのは、ホテルでの滞在に慣れていないからともいえます。お客様から要望を伝えることも大切ですね。

常に両面からのサービス提供を

伊東:ホテルのユニバーサル化に関して、今後何かお考えのことがありましたら、教えてください。
中村:若い世代が、障害のある方への接客、人として接するということを学ぶ機会を増やしたいと思っています。また、今あるユニバーサルルームも、経年劣化するでしょうし、新しいモデルに変えていく機会も必要だと思っています。
実は私は、今あの部屋があることでスタッフが安心してしまっているのではないかと不安なのです。「車いすの方は、あの部屋に案内すればいい」と決めつけてしまわないかと。すごくいい部屋ですし、活かしたいのはもちろんですが、そういう考え方になってしまうのは少し怖いです。本当は、全室がユニバーサルであればいいですが、すぐには難しいですので、ソフト面でのサービスも常に提供できる状態でいたいです。
国内で、オリンピック・パラリンピックに向けて高まっていた機運が、いま少し止まってしまっているような気がします。業界全体でさらに進めていければと思います。
ホテルはいろいろな方が利用されるところです。高齢者・障害のある方が使いやすく、かつホテルらしさも必要。私たちはこれからも、自分たちのホテルカラーを失わずに、皆様に快適にお過ごしいただけるような「場所」を作っていきたいと思います。
杉浦:もともと、ホテルで働く私たちは、誰かの役に立ちたいと思ってこの仕事を選んでいますので、どの方に対しても何かお役に立てることはないかという意識を常に持っていると思います。機械やコンピューターが発達して、いろいろなことが便利になっても、最後は「人」だと思います。相手が「人」だからこそ、ご意見を言っていただけるし、おっしゃることで気持ちを落ち着けていただけたり。
開業当時から掲げている、設備(ハード)と人(ソフト)の両面でのおもてなし、ユニバーサルサービスの提供に努めていきたいと思います。
伊東:貴重なお話を聞けて、大変勉強になりました。障害者差別解消法  が成立し実現したとき、障害者側からいろいろな反論が出てきました。もっと必要だ、とか、特別扱いを期待する人とか、逆に普通にしてほしい、とか。人によって状況は違いますからさまざまな意見がありますが、全体のバランスが大切ですね。
京王プラザホテルさんには、これからもいろいろな方が気軽に立ち寄れるホテルとして、ご発展を期待しています。

京王プラザホテル ユニバーサルルームのご紹介

ユニバーサルルームは、本館30階に13室(3タイプ)あります。また、ご希望に応じて、貸出し可能な備品・器具もあります。

デラックス・ツインルーム(35.5㎡)

他に、客室面積がより広い「ジュニアスイート」「ラグジュアリーデラックス」もあります。

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調節・着脱ができる、トイレの手すり

水回り製品のデンマークのトップメーカー・プレサリット社の「マルチトラックシリーズ  」が導入されています。

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【 必要な時に手すりや背もたれを取り付け 】

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【 取り外した様子 】

貸出備品 一部を除き、ユニバーサルルーム以外でも使用できます

バスボード、バスグリップ(バスタブ用手すり)、バスステップ(踏み台)、シャワーチェアなど。他にも、車いすや滑り止めマット、背もたれクッションなどもあります。

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共有スペースにもさまざまな配慮

・30階のエレベーターホールに、音声標識ガイドシステム導入
・宴会場に磁気ループシステム設置
・補助犬専用のトイレ設置 など

※同ホテルのユニバーサルルームは、国土交通省のバリアフリーガイドライン(高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準)にも掲載されています。

関連情報

ユニバーサルルームなどの詳細は下よりご覧いただけます。

*本⽂書に記載している情報は、発表⽇時点のものです。

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